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松井常松

2006.9.11

スペシャルインタビューVo.3
「nylonnights」 ~ the following CD & lives

8年待ち続けた渇望感が、ひたひたと潤っていった夜。
アコースティックな音に乗ったその声はどこまでもやわらかく、疲れたココロをふわっと癒してくれて、その余韻は随分長いこと胸の奥から消えなかった。あの鎌倉歐林洞ライブから約1ヶ月が経った某日、そんな感覚を反芻しながらインタビューの場所へ向かった。松井氏は、珍しく素通しメガネをかけて、ゆったりとくつろいでいた。でもどこかこめかみのあたりに、少しだけ厳しさみたいな色を漂わせながら。

早速、現在レコーディング進行中という松井氏に、9月23日から発売開始になるその新作、「nylonnights」について話を訊いた。

■最初に、アルバムのコンセプトについて聞かせてください。

「コンセプトは、前回の歐林洞の、あの空気感。それをそのまま封じ込めたようなアルバムにしたいということかな。ライブに来てくれた人たちにとって、あのときの空間を思い出してもらえるような、記念になるような作品になればというのが出発点ですね」

エンジニアとも素晴らしい出会いがあったという今回のレコーディング。全編アコースティックという、はじめての試みは、どんなものだったのだろうか。

■今回のレコーディングにあたって、何かこれまでと違った手法といったものはありましたか?

「ライブの再現という意味合いで作りはじめたものなので、普通のレコーディングと違って、シンプルに作業を進めていきました。基本的にはワンテイクで、直しはほとんどない。ジャスト・ジャストにこだわってない分、ライブ感が出て、まさに再現が出来たという感じですね」

■松井さんがそういう作り方をしたのって、珍しいことですよね。

「僕としては、こんなに気楽に作ったのははじめてですね。でも、そのおかげで気負わず、力まずに、自然に歌えたので、歌がすごく聞きやすくなったと思う。勿論素晴らしいミュージシャン揃いだったから、ワンテイクなんてことが可能だったんです。みんながすごく参加意識を持っていてくれたから、出来たことなんだよね」

ある時から、自分に向かって来る流れに逆らわず、柔軟に人の意見を取り入れていくようになったと言う松井氏。すると、どんどん面白い結果、いい結果が見られて来たのだそうだ。彼がステージに戻って来たのは、その流れがもたらしたさまざまな出会い……それらが必然的にからまり合った結果だとしたら素敵だ。あくまでも穏やかな表情で、出会いのチカラについて淡々と語る彼。

次回のライブ、~nylonnights in AOYAMA~はどういう展開になるのだろう。

■メンバーは歐林洞のときと同じ方たちでしょうか?

「メンバーは変わります。ギタリストの稲葉(智)君とパーカッションの酒井(麿)君は同じですが、今回はバイオリンの岡村美央さんが参加します。サックスの古村(敏比古)さんは、たまたま先に決まった仕事があったので、今回は参加しません」

■青山での見どころなど、差し支えない程度に教えてください。

「今回の「月見ル」では、あの小屋で僕の曲にバイオリンが入ることで、すごく映えるんじゃないかなと思うんです。だからあんまりうるさくしないで聞いてくれるといいんだけどな(笑)」

■次回のライブ、何か松井さん的サプライズはお考えでしょうか?

「サプライズね……あのスタイルで、『WORKING MAN』をやるわけにもいかないしね(笑)。そう、ファーストやセカンドの曲については女性ヴォーカルが入るかな?これ以上はシークレットにしておいた方が楽しめるから、ここまでということで」

ライブについて語る松井氏は、立て板に水のごとく、イキイキと楽しそうだ。素通しメガネのなかの瞳が、一層色濃く見える。今、何よりも歌うことが楽しくてならないのがよく伝わって来た。歐林洞でのライブで大歓迎を受けて、そのあったかいパワーが自分のなかに入ったことが、今回のアルバム作りの原動力になったと言う。少し歐林洞のことも振り返りながら、確認したかったことをぶつけてみた。

■歐林洞での、ベースを持たない松井常松。ある意味衝撃だったんですけれど。

「ベースとギターって違う楽器だけど、実際弾いてみて思ったのは、どっちも僕のスタイルは同じなんだってこと。僕のベースってめちゃめちゃシンプルなスタイルでしょ? あんまりフィルやおかずとかバシバシやったりするタイプじゃないし。ギターもそうなんですね。ストロークのパターンがあって、そのパターンをキープして、余計なことはやらないっていう。
あのストローク自体、音域は違うけれども、ベースみたいなことを実はやってるんですね。倍音の多いベースというか。楽器変えても、同じことをやってる。本当にそれは、実感しましたね」

■唐突ですが、ステージから可愛い子って、探してみたりするモノなのでしょうか?

「(ちょっと目を見開き加減にして)僕は、基本的に譜面を見ながら歌ってますから。MCのときは、会場全体が見渡せますけど……まあ、楽屋でそんな話になることもありますけどね。どうなんでしょう、ねえ(答えようがないといった表情で)」

■これからの活動予定を聞かせてください。

「これからは、3ヶ月に一度はみんなの前に出ようと思っています。スタイルは変わっていくかも知れないけど、みんなの顔を見に、ステージには立っていきたいですね。それから、あるバンドのプロデュースをしました。詳細は、また後日」

■今の松井さんを一番鼓舞してくれているものは何ですか?

「鼓舞してくれているもの、それはファンの人たちだよ。青山も頑張っていいものにしようと思ってるのも、みんなの顔が浮かんでくるからだしね」

今回、作品に込めたメッセージは何もないと言う。それは、私たち聞き手が、Matsui’s worldのなかで自由に気持ちを遊ばせて、どこまでも貪欲にさまざまな思いを感じ取ればいい、ということなのかも知れない。
その声音から、ブレスから、醸し出される雰囲気から。そんな今の松井常松を、それぞれのスタンスで、解釈で、やわらかなココロで楽しもう。

そして、日々のサプリメントにしたり、ナイトキャップにしたり、好きな人を思うときのパートナーにしたり……自分流に、この音をゆっくりと味わっていこう。歌いたい気持ちにあふれた松井常松から届けられたギフトは、あなたのなかでどんな化学変化を起こしていくだろうか。どんなふうに羽ばたいていくだろうか。
お楽しみは、これからである。

(インタビュアー 麻田沙帆)

2006.9.11

スペシャルインタビューVo.3
「nylonnights」 ~ the following CD & lives

8年待ち続けた渇望感が、ひたひたと潤っていった夜。
アコースティックな音に乗ったその声はどこまでもやわらかく、疲れたココロをふわっと癒してくれて、その余韻は随分長いこと胸の奥から消えなかった。あの鎌倉歐林洞ライブから約1ヶ月が経った某日、そんな感覚を反芻しながらインタビューの場所へ向かった。松井氏は、珍しく素通しメガネをかけて、ゆったりとくつろいでいた。でもどこかこめかみのあたりに、少しだけ厳しさみたいな色を漂わせながら。

早速、現在レコーディング進行中という松井氏に、9月23日から発売開始になるその新作、「nylonnights」について話を訊いた。

■最初に、アルバムのコンセプトについて聞かせてください。

「コンセプトは、前回の歐林洞の、あの空気感。それをそのまま封じ込めたようなアルバムにしたいということかな。ライブに来てくれた人たちにとって、あのときの空間を思い出してもらえるような、記念になるような作品になればというのが出発点ですね」

エンジニアとも素晴らしい出会いがあったという今回のレコーディング。全編アコースティックという、はじめての試みは、どんなものだったのだろうか。

■今回のレコーディングにあたって、何かこれまでと違った手法といったものはありましたか?

「ライブの再現という意味合いで作りはじめたものなので、普通のレコーディングと違って、シンプルに作業を進めていきました。基本的にはワンテイクで、直しはほとんどない。ジャスト・ジャストにこだわってない分、ライブ感が出て、まさに再現が出来たという感じですね」

■松井さんがそういう作り方をしたのって、珍しいことですよね。

「僕としては、こんなに気楽に作ったのははじめてですね。でも、そのおかげで気負わず、力まずに、自然に歌えたので、歌がすごく聞きやすくなったと思う。勿論素晴らしいミュージシャン揃いだったから、ワンテイクなんてことが可能だったんです。みんながすごく参加意識を持っていてくれたから、出来たことなんだよね」

ある時から、自分に向かって来る流れに逆らわず、柔軟に人の意見を取り入れていくようになったと言う松井氏。すると、どんどん面白い結果、いい結果が見られて来たのだそうだ。彼がステージに戻って来たのは、その流れがもたらしたさまざまな出会い……それらが必然的にからまり合った結果だとしたら素敵だ。あくまでも穏やかな表情で、出会いのチカラについて淡々と語る彼。

次回のライブ、~nylonnights in AOYAMA~はどういう展開になるのだろう。

■メンバーは歐林洞のときと同じ方たちでしょうか?

「メンバーは変わります。ギタリストの稲葉(智)君とパーカッションの酒井(麿)君は同じですが、今回はバイオリンの岡村美央さんが参加します。サックスの古村(敏比古)さんは、たまたま先に決まった仕事があったので、今回は参加しません」

■青山での見どころなど、差し支えない程度に教えてください。

「今回の「月見ル」では、あの小屋で僕の曲にバイオリンが入ることで、すごく映えるんじゃないかなと思うんです。だからあんまりうるさくしないで聞いてくれるといいんだけどな(笑)」

■次回のライブ、何か松井さん的サプライズはお考えでしょうか?

「サプライズね……あのスタイルで、『WORKING MAN』をやるわけにもいかないしね(笑)。そう、ファーストやセカンドの曲については女性ヴォーカルが入るかな?これ以上はシークレットにしておいた方が楽しめるから、ここまでということで」

ライブについて語る松井氏は、立て板に水のごとく、イキイキと楽しそうだ。素通しメガネのなかの瞳が、一層色濃く見える。今、何よりも歌うことが楽しくてならないのがよく伝わって来た。歐林洞でのライブで大歓迎を受けて、そのあったかいパワーが自分のなかに入ったことが、今回のアルバム作りの原動力になったと言う。少し歐林洞のことも振り返りながら、確認したかったことをぶつけてみた。

■歐林洞での、ベースを持たない松井常松。ある意味衝撃だったんですけれど。

「ベースとギターって違う楽器だけど、実際弾いてみて思ったのは、どっちも僕のスタイルは同じなんだってこと。僕のベースってめちゃめちゃシンプルなスタイルでしょ? あんまりフィルやおかずとかバシバシやったりするタイプじゃないし。ギターもそうなんですね。ストロークのパターンがあって、そのパターンをキープして、余計なことはやらないっていう。
あのストローク自体、音域は違うけれども、ベースみたいなことを実はやってるんですね。倍音の多いベースというか。楽器変えても、同じことをやってる。本当にそれは、実感しましたね」

■唐突ですが、ステージから可愛い子って、探してみたりするモノなのでしょうか?

「(ちょっと目を見開き加減にして)僕は、基本的に譜面を見ながら歌ってますから。MCのときは、会場全体が見渡せますけど……まあ、楽屋でそんな話になることもありますけどね。どうなんでしょう、ねえ(答えようがないといった表情で)」

■これからの活動予定を聞かせてください。

「これからは、3ヶ月に一度はみんなの前に出ようと思っています。スタイルは変わっていくかも知れないけど、みんなの顔を見に、ステージには立っていきたいですね。それから、あるバンドのプロデュースをしました。詳細は、また後日」

■今の松井さんを一番鼓舞してくれているものは何ですか?

「鼓舞してくれているもの、それはファンの人たちだよ。青山も頑張っていいものにしようと思ってるのも、みんなの顔が浮かんでくるからだしね」

今回、作品に込めたメッセージは何もないと言う。それは、私たち聞き手が、Matsui’s worldのなかで自由に気持ちを遊ばせて、どこまでも貪欲にさまざまな思いを感じ取ればいい、ということなのかも知れない。
その声音から、ブレスから、醸し出される雰囲気から。そんな今の松井常松を、それぞれのスタンスで、解釈で、やわらかなココロで楽しもう。

そして、日々のサプリメントにしたり、ナイトキャップにしたり、好きな人を思うときのパートナーにしたり……自分流に、この音をゆっくりと味わっていこう。歌いたい気持ちにあふれた松井常松から届けられたギフトは、あなたのなかでどんな化学変化を起こしていくだろうか。どんなふうに羽ばたいていくだろうか。
お楽しみは、これからである。

(インタビュアー 麻田沙帆)

松井常松

2006.9.11

スペシャルインタビューVo.3
「nylonnights」 ~ the following CD & lives

8年待ち続けた渇望感が、ひたひたと潤っていった夜。
アコースティックな音に乗ったその声はどこまでもやわらかく、疲れたココロをふわっと癒してくれて、その余韻は随分長いこと胸の奥から消えなかった。あの鎌倉歐林洞ライブから約1ヶ月が経った某日、そんな感覚を反芻しながらインタビューの場所へ向かった。松井氏は、珍しく素通しメガネをかけて、ゆったりとくつろいでいた。でもどこかこめかみのあたりに、少しだけ厳しさみたいな色を漂わせながら。

早速、現在レコーディング進行中という松井氏に、9月23日から発売開始になるその新作、「nylonnights」について話を訊いた。

■最初に、アルバムのコンセプトについて聞かせてください。

「コンセプトは、前回の歐林洞の、あの空気感。それをそのまま封じ込めたようなアルバムにしたいということかな。ライブに来てくれた人たちにとって、あのときの空間を思い出してもらえるような、記念になるような作品になればというのが出発点ですね」

エンジニアとも素晴らしい出会いがあったという今回のレコーディング。全編アコースティックという、はじめての試みは、どんなものだったのだろうか。

■今回のレコーディングにあたって、何かこれまでと違った手法といったものはありましたか?

「ライブの再現という意味合いで作りはじめたものなので、普通のレコーディングと違って、シンプルに作業を進めていきました。基本的にはワンテイクで、直しはほとんどない。ジャスト・ジャストにこだわってない分、ライブ感が出て、まさに再現が出来たという感じですね」

■松井さんがそういう作り方をしたのって、珍しいことですよね。

「僕としては、こんなに気楽に作ったのははじめてですね。でも、そのおかげで気負わず、力まずに、自然に歌えたので、歌がすごく聞きやすくなったと思う。勿論素晴らしいミュージシャン揃いだったから、ワンテイクなんてことが可能だったんです。みんながすごく参加意識を持っていてくれたから、出来たことなんだよね」

ある時から、自分に向かって来る流れに逆らわず、柔軟に人の意見を取り入れていくようになったと言う松井氏。すると、どんどん面白い結果、いい結果が見られて来たのだそうだ。彼がステージに戻って来たのは、その流れがもたらしたさまざまな出会い……それらが必然的にからまり合った結果だとしたら素敵だ。あくまでも穏やかな表情で、出会いのチカラについて淡々と語る彼。

次回のライブ、~nylonnights in AOYAMA~はどういう展開になるのだろう。

■メンバーは歐林洞のときと同じ方たちでしょうか?

「メンバーは変わります。ギタリストの稲葉(智)君とパーカッションの酒井(麿)君は同じですが、今回はバイオリンの岡村美央さんが参加します。サックスの古村(敏比古)さんは、たまたま先に決まった仕事があったので、今回は参加しません」

■青山での見どころなど、差し支えない程度に教えてください。

「今回の「月見ル」では、あの小屋で僕の曲にバイオリンが入ることで、すごく映えるんじゃないかなと思うんです。だからあんまりうるさくしないで聞いてくれるといいんだけどな(笑)」

■次回のライブ、何か松井さん的サプライズはお考えでしょうか?

「サプライズね……あのスタイルで、『WORKING MAN』をやるわけにもいかないしね(笑)。そう、ファーストやセカンドの曲については女性ヴォーカルが入るかな?これ以上はシークレットにしておいた方が楽しめるから、ここまでということで」

ライブについて語る松井氏は、立て板に水のごとく、イキイキと楽しそうだ。素通しメガネのなかの瞳が、一層色濃く見える。今、何よりも歌うことが楽しくてならないのがよく伝わって来た。歐林洞でのライブで大歓迎を受けて、そのあったかいパワーが自分のなかに入ったことが、今回のアルバム作りの原動力になったと言う。少し歐林洞のことも振り返りながら、確認したかったことをぶつけてみた。

■歐林洞での、ベースを持たない松井常松。ある意味衝撃だったんですけれど。

「ベースとギターって違う楽器だけど、実際弾いてみて思ったのは、どっちも僕のスタイルは同じなんだってこと。僕のベースってめちゃめちゃシンプルなスタイルでしょ? あんまりフィルやおかずとかバシバシやったりするタイプじゃないし。ギターもそうなんですね。ストロークのパターンがあって、そのパターンをキープして、余計なことはやらないっていう。
あのストローク自体、音域は違うけれども、ベースみたいなことを実はやってるんですね。倍音の多いベースというか。楽器変えても、同じことをやってる。本当にそれは、実感しましたね」

■唐突ですが、ステージから可愛い子って、探してみたりするモノなのでしょうか?

「(ちょっと目を見開き加減にして)僕は、基本的に譜面を見ながら歌ってますから。MCのときは、会場全体が見渡せますけど……まあ、楽屋でそんな話になることもありますけどね。どうなんでしょう、ねえ(答えようがないといった表情で)」

■これからの活動予定を聞かせてください。

「これからは、3ヶ月に一度はみんなの前に出ようと思っています。スタイルは変わっていくかも知れないけど、みんなの顔を見に、ステージには立っていきたいですね。それから、あるバンドのプロデュースをしました。詳細は、また後日」

■今の松井さんを一番鼓舞してくれているものは何ですか?

「鼓舞してくれているもの、それはファンの人たちだよ。青山も頑張っていいものにしようと思ってるのも、みんなの顔が浮かんでくるからだしね」

今回、作品に込めたメッセージは何もないと言う。それは、私たち聞き手が、Matsui’s worldのなかで自由に気持ちを遊ばせて、どこまでも貪欲にさまざまな思いを感じ取ればいい、ということなのかも知れない。
その声音から、ブレスから、醸し出される雰囲気から。そんな今の松井常松を、それぞれのスタンスで、解釈で、やわらかなココロで楽しもう。

そして、日々のサプリメントにしたり、ナイトキャップにしたり、好きな人を思うときのパートナーにしたり……自分流に、この音をゆっくりと味わっていこう。歌いたい気持ちにあふれた松井常松から届けられたギフトは、あなたのなかでどんな化学変化を起こしていくだろうか。どんなふうに羽ばたいていくだろうか。
お楽しみは、これからである。

(インタビュアー 麻田沙帆)

2006.9.11

スペシャルインタビューVo.3
「nylonnights」 ~ the following CD & lives

8年待ち続けた渇望感が、ひたひたと潤っていった夜。
アコースティックな音に乗ったその声はどこまでもやわらかく、疲れたココロをふわっと癒してくれて、その余韻は随分長いこと胸の奥から消えなかった。あの鎌倉歐林洞ライブから約1ヶ月が経った某日、そんな感覚を反芻しながらインタビューの場所へ向かった。松井氏は、珍しく素通しメガネをかけて、ゆったりとくつろいでいた。でもどこかこめかみのあたりに、少しだけ厳しさみたいな色を漂わせながら。

早速、現在レコーディング進行中という松井氏に、9月23日から発売開始になるその新作、「nylonnights」について話を訊いた。

■最初に、アルバムのコンセプトについて聞かせてください。

「コンセプトは、前回の歐林洞の、あの空気感。それをそのまま封じ込めたようなアルバムにしたいということかな。ライブに来てくれた人たちにとって、あのときの空間を思い出してもらえるような、記念になるような作品になればというのが出発点ですね」

エンジニアとも素晴らしい出会いがあったという今回のレコーディング。全編アコースティックという、はじめての試みは、どんなものだったのだろうか。

■今回のレコーディングにあたって、何かこれまでと違った手法といったものはありましたか?

「ライブの再現という意味合いで作りはじめたものなので、普通のレコーディングと違って、シンプルに作業を進めていきました。基本的にはワンテイクで、直しはほとんどない。ジャスト・ジャストにこだわってない分、ライブ感が出て、まさに再現が出来たという感じですね」

■松井さんがそういう作り方をしたのって、珍しいことですよね。

「僕としては、こんなに気楽に作ったのははじめてですね。でも、そのおかげで気負わず、力まずに、自然に歌えたので、歌がすごく聞きやすくなったと思う。勿論素晴らしいミュージシャン揃いだったから、ワンテイクなんてことが可能だったんです。みんながすごく参加意識を持っていてくれたから、出来たことなんだよね」

ある時から、自分に向かって来る流れに逆らわず、柔軟に人の意見を取り入れていくようになったと言う松井氏。すると、どんどん面白い結果、いい結果が見られて来たのだそうだ。彼がステージに戻って来たのは、その流れがもたらしたさまざまな出会い……それらが必然的にからまり合った結果だとしたら素敵だ。あくまでも穏やかな表情で、出会いのチカラについて淡々と語る彼。

次回のライブ、~nylonnights in AOYAMA~はどういう展開になるのだろう。

■メンバーは歐林洞のときと同じ方たちでしょうか?

「メンバーは変わります。ギタリストの稲葉(智)君とパーカッションの酒井(麿)君は同じですが、今回はバイオリンの岡村美央さんが参加します。サックスの古村(敏比古)さんは、たまたま先に決まった仕事があったので、今回は参加しません」

■青山での見どころなど、差し支えない程度に教えてください。

「今回の「月見ル」では、あの小屋で僕の曲にバイオリンが入ることで、すごく映えるんじゃないかなと思うんです。だからあんまりうるさくしないで聞いてくれるといいんだけどな(笑)」

■次回のライブ、何か松井さん的サプライズはお考えでしょうか?

「サプライズね……あのスタイルで、『WORKING MAN』をやるわけにもいかないしね(笑)。そう、ファーストやセカンドの曲については女性ヴォーカルが入るかな?これ以上はシークレットにしておいた方が楽しめるから、ここまでということで」

ライブについて語る松井氏は、立て板に水のごとく、イキイキと楽しそうだ。素通しメガネのなかの瞳が、一層色濃く見える。今、何よりも歌うことが楽しくてならないのがよく伝わって来た。歐林洞でのライブで大歓迎を受けて、そのあったかいパワーが自分のなかに入ったことが、今回のアルバム作りの原動力になったと言う。少し歐林洞のことも振り返りながら、確認したかったことをぶつけてみた。

■歐林洞での、ベースを持たない松井常松。ある意味衝撃だったんですけれど。

「ベースとギターって違う楽器だけど、実際弾いてみて思ったのは、どっちも僕のスタイルは同じなんだってこと。僕のベースってめちゃめちゃシンプルなスタイルでしょ? あんまりフィルやおかずとかバシバシやったりするタイプじゃないし。ギターもそうなんですね。ストロークのパターンがあって、そのパターンをキープして、余計なことはやらないっていう。
あのストローク自体、音域は違うけれども、ベースみたいなことを実はやってるんですね。倍音の多いベースというか。楽器変えても、同じことをやってる。本当にそれは、実感しましたね」

■唐突ですが、ステージから可愛い子って、探してみたりするモノなのでしょうか?

「(ちょっと目を見開き加減にして)僕は、基本的に譜面を見ながら歌ってますから。MCのときは、会場全体が見渡せますけど……まあ、楽屋でそんな話になることもありますけどね。どうなんでしょう、ねえ(答えようがないといった表情で)」

■これからの活動予定を聞かせてください。

「これからは、3ヶ月に一度はみんなの前に出ようと思っています。スタイルは変わっていくかも知れないけど、みんなの顔を見に、ステージには立っていきたいですね。それから、あるバンドのプロデュースをしました。詳細は、また後日」

■今の松井さんを一番鼓舞してくれているものは何ですか?

「鼓舞してくれているもの、それはファンの人たちだよ。青山も頑張っていいものにしようと思ってるのも、みんなの顔が浮かんでくるからだしね」

今回、作品に込めたメッセージは何もないと言う。それは、私たち聞き手が、Matsui’s worldのなかで自由に気持ちを遊ばせて、どこまでも貪欲にさまざまな思いを感じ取ればいい、ということなのかも知れない。
その声音から、ブレスから、醸し出される雰囲気から。そんな今の松井常松を、それぞれのスタンスで、解釈で、やわらかなココロで楽しもう。

そして、日々のサプリメントにしたり、ナイトキャップにしたり、好きな人を思うときのパートナーにしたり……自分流に、この音をゆっくりと味わっていこう。歌いたい気持ちにあふれた松井常松から届けられたギフトは、あなたのなかでどんな化学変化を起こしていくだろうか。どんなふうに羽ばたいていくだろうか。
お楽しみは、これからである。

(インタビュアー 麻田沙帆)